No.159 2016/06/18
近視と老眼

FB友達の関さんの投稿に、近視と老眼についての説明をコメントしたら「勉強になった」と喜んでいただいたので、ここで説明します。
 私は昔、「近視の人は老眼になりにくい」「近視は老眼になると治る」という話を聞いたことがありますが、それは違います。近視と老眼はまったく別の原因で起こるもので、両者は関係がありません。
 レンズの焦点距離の逆数を屈折力といい、ジオプトリ(メートルの逆数)という単位で表します。眼でピントが合う距離をジオプトリに置き換えると、水晶体によるピント調整可能範囲は、若い人で0〜4ジオプトリ(無限遠〜1/4メートル)くらいです(幼い子供はもっと広く、0〜10ジオプトリくらい)。近視とは、近くを見続けることに眼が楽に適応できるように網膜が後ろにずれた眼です。50cmよりも遠くがはっきり見えなくなった近視の人は、裸眼でピントが合う範囲は2〜6ジオプトリ(1/2〜1/6メートル)にずれていますが、水晶体によるピント調整能力は変わっていません。そこで、-2ジオプトリの凹レンズの眼鏡をかけると、はっきり見える範囲が0〜4ジオプトリに矯正されます。
 老眼とは、水晶体によるピント調整能力が加齢で衰えることです。正常視力だった人は、遠くにしかピントが合わなくなるので、老眼の不自由さを強く感じます。そのため、「眼がいい人は早く老眼になる」かのように思われます。一方、2ジオプトリほどの近視の人が老眼になると、-2ジオプトリの眼鏡をかけた時には遠くにしかピントが合わなくなりますが、眼鏡をはずすと50cm先の本がよく読めます。そこで、遠くがはっきり見えないことはあきらめて、車の運転などに必要な時以外は眼鏡なしで生活するようになると、傍目には「近視の人が年を取ったら眼鏡が不要になった」かのように思われます。
 ついでに言えば、近視になりたての若い人は、遠くが見えるための眼鏡をかけたまま近くを見続けるから度が進みます。コンタクトレンズは、遠くを見る必要がある時だけさっと付けるということが難しいので、私は勧めません。また、眼鏡を使いたくないという理由だけでのレーシック手術には反対です。
 それと、まだ老眼になっていない正常視力の人が本やコンピュータ画面や細かい物を見る時に老眼鏡をかけると眼が楽に感じるなら、凸レンズの眼鏡を使えばよいと思います。その方が頭脳の集中力が高まるそうです。

There is no relation between shortsightedness and presbyopia. Shortsightedness is an adaption to continue to see near. The retinae recede, but the focusing ability of the crystalline lenses doesn't get weak. Presbyopia is weakening of the focusing ability of the crystalline lenses. When people with good eyesight become presbyopic, they feel inconvenience for seeing near earlier than shortsighted people. So some people mistakenly think that people with good eyesight become presbyopic earlier. When slightly shortsighted people become presbyopic, they can easily see a book, a computer display or very small things taking the glasses off. They may stop to wear always the glasses. So some people mistakenly think that shortsighted people recover their eyesight when getting old.

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