No.88 2001/04/07
古いPHSカードがWindows 2000で動いてしまった

 私は、Windows 98プレインストールのノートパソコンを使っています。Windows 98の安定度の悪さは知っていたので、本当は使いたくありませんでした。しかし、Windows 95は最近のパソコンの新しいハードウェアに対応できなくなったので、しかたなしに使っていました。
 シャットダウンしようとして固まってしまうのはしょっちゅう。192MBのメモリを積んでいてもすぐにメモリ不足を起こし、アプリケーションプログラムが起動しなくなったり、画面がおかしくなったりする。趣味のためならなんとか使えますが、仕事で使う時にメーラー、ブラウザ、Excelなどいくつかのプログラムを同時に動かすと不安定になってしまい、非常に不便でした。Windows 95も安定度の悪さが批判されていましたが、Windows 98よりもずっとましでした。

 Windows 2000は、Windows 95および98とは別系統のOSです。完全な32ビットOS(32ビットの命令符号で動くOS)であるWindows NTをベースとするものです。
 Windowsパソコンに使われているインテル社製および互換のCPU(中央処理装置)は、命令符号が16ビットだった時代(MS-DOSやWindows 3.1の時代)から32ビットへと発展してきたもので、古いプログラムも使えるように両方の命令で動くようになっています。しかし、たくさんのプログラムを並行して安定的に動かすには、32ビット命令の方が適しています。Windows 2000は、Windows 95および98がWindows 3.1の時代からひきずっていた16ビット命令を振り捨てて、Windows NTをベースとすることにより、高い安定度を実現したのです。
 しかし、OSが大幅に変更されたため、Windows 95および98で動いていたプログラムに不具合が起こることがあったり、周辺装置のドライバ(ハードウェアを駆動するためのプログラム)をWindows 2000対応に直さなければ装置が使えなくなるという問題があります。

 最近、アプリケーションソフトウェアやハードウェアのWindows 2000対応が進んできて、十分使えるようになったと判断したので、Windows 2000を入れてみることにしました。
 いつも使うアプリケーションプログラムがWindows 2000で不具合を起こすと困るので、Windows 98も立ち上がるようにマルチブートにすることにしました。そこで、あらかじめWindows 98上でPartitionMagicというツールを動かしてハードディスクをパーティショニングしておき(第44回参照)、空きパーティションにWindows 2000をインストールしました。
 インストールはいたって簡単。「どうしますかこうしますか」と尋ねられることはごく少なくなっています。フラットパッドや内蔵LANインタフェースなど、少し前にはハードウェアメーカーがドライバを提供しなければならなかったハードウェアも、何の問題もなく自動的に認識されました。
 安定度の高さは評判どおり。安心してたくさんのアプリケーションプログラムを同時に動かすことができます。
 感心したのは、システムプログラムファイルを削除あるいは上書きしてもすぐに修復されてしまうことです。そのため、あえてシステムプログラムファイルを変更したい時に特殊な操作を強いられることもあるのですが、初心者の操作ミスでトラブルに陥る危険が防止されます。Windows 2000のパッケージには「あなたに最適なWindowsをお選びください。仕事に使うならWindows 2000、家庭でインターネットを楽しむならWindows 98」という意味のことが書いてありますが、初心者にこそWindows 2000は適しているといえるでしょう。
 気に食わないのは、ウィルスを自動的にばらまくことがある危険なメーラーであるOutlook Expressもシステムプログラム扱いになっていて、アンインストールできないことです。まあ、そのことはおいときましょう。

 さて、ここからが本題です。
 私は、NTTドコモのPHS接続用PCカード「DC-2S(II)」をモバイルに使っています。1998年に買ったものです。そのドライバはWindows 95および98のみの対応で、Windows 2000対応のドライバは提供されていません。古い機種なので、今後もWindows 2000対応の予定はないようです。試しに添付のドライバをインストールしてみましたが、案の定動きません。さて、どうしよう。
 Windows 98で立ち上げることもできますから、モバイルする時だけWindows 98を使うという方法もあります。Windows 98からでもWindows 2000からでもアクセスできるデータ用のパーティションを作ってあって、メールフォルダなどのデータをそこに置いていますから、OSを切り替えてもメールの送受信などに不便はありません。しかし、Windows 2000の安定度の良さに味をしめてしまうと、なんとかモバイルでもWindows 2000を使いたいと思ってしまいます。
 Windows 2000対応のドライバが提供されている新しいPCカードを買おうか。「DC-6S」という新しいPCカードは64kbps対応です。しかし、せっかくそれを買っても、使い慣れたPHSは32kbpsにしか対応していません。それに、64kbps対応のPHSがあっても、私がモバイルしたい主な場所(帰省先など)ではまだ32kbpsでしか通信できないことがわかっています。約1万円も出して新しいのを買うのもしゃくだ。

 そこで私はとんでもないことを考えました。「DC-6SのドライバでDC-2S(II)が動かないかな」。
 なぜこんなことを思いついたかというと、型番から見て同じシリーズだし、PCカードの概観が「32K」と「64K」のマークの違い以外そっくりだということです。だから、ドライバがPCカードに発する命令には互換性があるかもしれないと思ったのです。
 素人なら、こんなとんでもないことを考えるかもしれません。コンピュータを知っている人なら、「おいおい、ちょっと待てよ」と言うはずです。メーカーは「そんなことをしたら保証できませんよ」と言うに違いありません。しかし、私は、装置が異常動作を起こして壊れる可能性も皆無ではないと覚悟し、壊れたらどうするかまで考えたうえで、やってみることにしました。

 NTTドコモのサイトからDC-6Sのドライバをダウンロードしました。説明書のファイルには、著作権に関することとして「ドライバの著作権はNTTドコモにある」、「ドライバを改変してはならない」ということしか書いてありません。DC-6Sの購入者にしか使用権がないとは書いてありませんから、使っても違法にはならないはず。
 インストールしてみました。…動いちゃった。インターネットへのダイヤルアップも成功。
 こういうこともあるんですねえ。かくして、追加の出費なく、めでたくWindows 2000でモバイルできるようになりました。

 でも、良い子は真似しないでくださいね。メーカーの保証の範囲外のことをすれば、何が起こってもメーカーに苦情を言うことはできません。結果の責任は全部自分で負わなければなりませんからね。

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