以前同じ職場だった女性社員から聞いたことです。
3年も前のことですが、以前会社で使っていたUNIXマシンから回収してストリーム・ファイルとして保存していた古いメールを見つけて、ようやくネタにしました。
彼女は、当時1歳の子供を連れて家族で
那須高原へ旅行に行き、某
ペンションに宿泊しました。そのペンションは、早い時期からウェブサイトを立てていました。彼女は、そのウェブを見て、「お子様も大歓迎」という感じだったので好感を持ち、そこを選んだそうです。ところが…
「子供の食事を用意してもらったが、サラダのほかは、冷凍食品のエビピラフと冷凍食品のフライ。手作りの料理を期待していたのに。こんなことなら、子供の分は注文せずに、大人の分から分け与えた方がよかった。」
ペンションのオーナーが言うには、手作りの料理を出すために一人よけいに雇うなんてやってられないとのことだったそうです。
失望がそれにとどまればよかったのですが…
彼女は、初めての子育てに疲れを感じていたこともあったのでしょう。たまには後片付けから解放されたいという気持ちで、子供がテーブルの上や下にこぼした食べ物をそのままにしてしまったそうです。すると、夜、オーナーに「親としての常識がない」「こんな客には泊まってほしくない」と言われ、2泊の予定を1泊で打ち切って帰ったそうです。
私は、彼女は食べこぼしを片付けた方がよかったと思います。しかし、私はそのオーナーに言いたい。「あなたこそ客商売のプロとして非常識だ」と。
自分の価値観で人を「親として非常識だ」と思うのは勝手です。しかし、相手がお客様である以上、怒りをストレートにぶつけていやな気分を与えてはプロ失格です(そんなプロ失格の奴は、どうせ、おとなしい客を相手にしか吠えることができないものでしょう。やくざの親分風の客にも同じことを言えるか?)。
子供の食べこぼしを客が自分で片付けてくれないのが困るのなら、こう言えばいいでしょう。
「当ペンションでは、おもてなしにあまり手間をかけない代わりにお安くご利用いただくことをモットーとしております。大変恐縮ですが、お子様がこぼされた食べ物の片付けに手間がかかりますので、お手伝いいただけると助かるのですが。」
このくらいの言い方ができてこそプロというものです。真に非常識な客でない限り、丁寧にそのように言えば片付けるはずです。ペンション側で片付けてしまった後なら、もうそのことは客に言ってはいけません。
彼女は、それ以来、食べこぼしは必ず片付けているけれども、ペンションは絶対に利用しなくなったそうです。かわいそうに、その時のことが今なおトラウマになっているようです。ペンション業界全体が一家族の客を失ったのです。
今でも、そのペンションのウェブは、非常に良い印象をアピールしています。実際、大多数の宿泊客は、いやな気分を持つことなく帰っていることでしょう。
しかし、旅館業に限らずあらゆるサービス業に言えることですが、まれなケースが起こった時にどう対応するかで、そのサービスの質が露呈するものだと思います(インターネットサービスプロバイダもそうでしょう)。人づてに「うん、まあまあだったよ」と聞いた程度では、本当に良い宿泊施設かどうかはわからないものかもしれません。もし「旅館に申し訳ないことをしてしまったのだが、それにもかかわらず親切にしてもらった」という話を聞いたら、そのサービスは本物でしょう。
ということで、私の経験を一つご紹介します。
数年前、道路の大渋滞で到着が夜9時過ぎになってしまったにもかかわらず、その旅館では従業員が遅くまで待っていてくれて、親切にもてなしてくれました。私は、恐縮して、料金に謝礼を上乗せして払いました。長野県・白骨温泉の
丸永旅館です。