No.37 2000/02/26
ネットニュース廃止計画

 ネットニュース(単にニュースともいいます)は、電子メールと同じくらい古くからあるインターネットサービスで、不特定の人たちの間でのメッセージ交換手段です。
 ネットニュースとは、「ネットワークを使った新聞」の意味です。発信されるメッセージの単位を「記事」と呼びます。記事は、コンピュータからコンピュータへとバケツリレーのように配送され、世界中に伝わります。ユーザーは、読者であると同時に新聞記者のように記事を投稿することができます。ソフトウェアや知識を公開したり、質問を流して回答を募るなどの目的によく使われます。
 ネットニュースのサービスの性質は、インターネットが普及する前のパソコン通信で使われていた電子掲示板に似ています。しかし、電子掲示板では記事が一箇所のコンピュータに「掲示」されるのに対して、ネットニュースでは記事がたくさんのコンピュータに「配達」されていくという点が異なります。パソコン通信の電子掲示板は、そのパソコンネットワークの中だけで使われるものでした。それに対してネットニュースは、ネットワークをまたがって記事が配送されていきますから、世界中のどのネットワークのユーザーにもメッセージが伝わります。ですから、かつては、ネットニュースは電子掲示板よりも優れた方式だという考えがありました。

 ところが、インターネットの普及が進んでから、状況が変わってきました。電子掲示板が復権したのです。
 その要因は、皆さんが私のこの記事を見るのにもお使いのワールドワイドウェブ(短くはウェブと呼びます)の普及です。これは、「世界規模の蜘蛛の巣」という意味で名付けられた新しいインターネットサービスです。ウェブは、一般の人たちがインターネットの便利さを実感するにはこれ以上のものはないといえるほどのもので、インターネットの大衆化の推進役になりました。
 ウェブは、ユーザーのコンピュータからのアクセスに応じて文書を提示するデータベースシステムです。しかし、それだけにとどまらず、CGI(Common Gateway Interface)というしかけによって、ユーザーが入力したデータをサーバへ送ることもできる双方向コミュニケーションも実現しました。ISP(インターネットサービスプロバイダ)のオンライン契約、ソフトウェアのユーザー登録、その他各種の申し込みなどはCGIを利用して行われます。ウェブインタフェースによる使いやすい電子掲示板も、CGIによって可能になりました。
 そして、ウェブの利用が可能になったのは、IP(インターネットプロトコル)接続という接続形態によって全世界のネットワークが相互に結ばれるようになったからです。かつては、ネットワーク間接続の回線コストが高いなどの理由で、電話回線経由でファイルを一つずつ転送するという形態の通信も多く用いられていました。そのような接続形態でも電子メールやネットニュースは利用できますが、ウェブは利用できません。しかし、全世界のネットワークがIP接続で結ばれるようになったので、ウェブによって不特定の人たちの間での世界規模のコミュニケーションができるようになったのです。

 さて、こうなってくると、電子掲示板に比べてネットニュースの欠点が目立つようになりました。

 こう考えていくと、ユーザーにとって利用しやすいものでなく、サーバ管理者にも負担になるネットニュースは、もうなくてもよいのではないかと思えてきます。まだ世界中のたくさんの人たちが利用していることは確かですが、電子掲示板に置き換えることは、やろうと思えば可能でしょう。ソフトウェアを流通させるためのニュースグループならば、提供の場をウェブサイトに移せばよいのです。情報交換のためのニュースグループならば、いくつかのウェブサーバで電子掲示板を運用してそこへ移せばよいのです。いずれにしても、ネットニュースの利用者に移行先のサーバがわかるようにすれば問題ないでしょう。それでどうしても困るという人はおそらくいないと思います。
 考えられる問題としては、企業の社員が機密情報を外部の電子掲示板に投稿してしまうのを企業のネットワーク管理者が検出しにくいということが挙げられます。ネットニュースならば、企業内に中継サーバがありますから、外へ投稿された記事のコピーを電子メールでネットワーク管理者に通知するようにして、まずい記事を発見したら投稿者に記事の削除を命じることができます。とはいえ、インターネットにはすでにたくさんの電子掲示板があるのですから、機密情報を守るためにネットニュースを残した方がよいということにはならないでしょう。

 私の勤務先では、ネットニュースを社内限定の情報流通にも利用していました。今、社内限定のネットニュースを全廃して電子掲示板に切り替えることを計画中です。
 外部から受けるネットニュースは、情報収集のためであって、それが止まってもただちに業務に支障をきたすわけではありません。しかし、社内限定のネットニュースは、重要な社内通達も流れるので、止まると困ります。信頼性が要求されるサービスには、ネットニュースよりも電子掲示板の方が好都合ですし、運用の労力も少なくてすみます。
 本当は、外部から受信するネットニュースの運用もやめてしまいたいところです。もっとも、完全にやめては情報の収集に困るので、なるべく運用が楽で社員も満足する方法を模索しているところです。


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