No.23 1999/12/23
セールス電話撃退法(個人情報保護編)

 こちらが勤務中なのにこちらの業務に無関係なセールス電話をずうずうしくも職場にかけてくる業者は、いったいどうやってこちらの名前や勤務先電話番号を知るのでしょうか。どうやら、裏で暗躍している名簿屋なる業者から情報を買っているケースが多いようです。名簿屋は、学校の同窓会名簿や学会の会員名簿や企業の社員名簿などを、ごみの中から拾い集めたり、持っている人から買い取ったりして、セールスに使いたい業者に横流ししているようです。我々の個人情報がこうして見ず知らずの他人に流出しているのです。
 氏名や勤務先などの個人情報が他人に知られるのはある程度やむを得ないにしても、一番困るのは、セールス電話で業務が妨害されることです。勤務先の電話番号さえ知られなければ、被害は非常に少なくなります。そこで、勤務先電話番号の情報が流出するのを防ぐ対策について以下に述べます。

同窓会名簿
 私の経験では、出身校の同窓会名簿が個人情報の流出源になることが最も多いようです。
 私は、就職後数年間は、同窓会事務局に提出する用紙に馬鹿正直に勤務先電話番号も記入していました。そのため、職場にセールス電話が頻繁にかかってきて、うんざりしてしまいました。その半面、同窓会名簿のおかげで同窓生から重要な連絡を受けることができてよかったというケースは一度もありませんでした。
 そこで、職場の移転の機会に、勤務先電話番号の欄を空白にして、「同窓会名簿を利用したセールス電話に迷惑していますので、勤務先電話番号の掲載はご容赦ください」と書き添えて同窓会事務局に提出しました。そうしたら、セールス電話はかなり減りました。
 同窓生から連絡を受けるのに困らないように、自宅の電話番号は掲載しています。おそらくそれを利用してか、自宅にセールス電話がかかってくることはあります。しかし、休日にしかかかってきませんし、回数はごく少ないので、困ってはいません。もし頻繁にかかってくるようになったとしても、自宅でなら、留守番電話を利用して相手を確認してから出るという方法を使えます。

学会名簿
 同窓会名簿に勤務先電話番号を掲載しないようにしたらセールス電話は減りましたが、まただんだん増えてきました。次に敵が利用するようになったのは、私が加盟している学会の名簿らしいとわかりました。そこで、学会事務局にも、勤務先電話番号の掲載をご容赦いただきたい旨通知しました。これでまたセールス電話は減りました。
 最近、私が加盟している情報処理学会などでは、個人情報の扱いに気を遣うようになり、住所や電話番号や電子メールアドレスを会員名簿に掲載するかどうかを会員が指定できるようになっています。

社員名簿
 学会名簿にも勤務先電話番号を掲載しないようにしたにもかかわらず、なおも時折セールス電話がかかってくるようになりました。「誰の紹介ですか?」と問いただしたところ、どうやら会社の社員名簿までもが流出しているらしいとわかりました。
 これはもう個人の力ではどうしようもありません。古い社員名簿をごみ箱や古紙回収ボックスに捨てることを禁じ、会社の権限で回収して処分するなどの全社的な対策が必要になります。しかし、それでもまだ個人情報保護策としては不確実でしょう。社員情報はイントラネット(インターネット技術を利用した社内ネットワーク)だけで流通するようにして、紙の名簿の配布をやめるという対策の方が有効でしょう。

購読者名簿
 雑誌や専門誌の定期購読を申し込む時にも気を付けましょう。会社の金で購読する場合は別として、個人で購読する場合は、送付先は自宅にするよう申し込み、勤務先電話番号は申込書に書かないのが安全です。
 購読者が自分の電話番号を書くのは、その雑誌や専門誌の購読に関する連絡を受けるためであるはずです。大多数の良心的な出版社は、購読者の電話番号をそのためにしか使いません。ところが、購読者の個人情報を、その定期購読とは無関係のセールスに利用する会社があります。今はどうか知りませんが、日経グループがそれをやっていました。
 以前、私の職場に、日経グループの会社からセールス電話を受けた人がいました。「日経エレクトロニクス」の購読者名簿がセールスのために横流しされたようだとのことでした。
 私も、日経グループの会社から自己啓発セミナーなどのセールス電話を何度か受けたことがあります。私は「日経エレクトロニクス」を個人で購読していたことはありますが、それをやめたあと職場が変わったにもかかわらず、不気味なことに職場にかかってきたのです。「私の電話番号をどうやって知ったのか」と問いただしたら、「それは日経グループの情報収集力によるものです」と、個人情報保護の意識がまるでないような言いぐさでした。「日経グループのデータベースから私の個人情報、少なくとも勤務先電話番号を削除してくれ」と言って突っぱねたら、それ以後かかってこなくなりました。一応は著名な企業グループなので、顧客の信用をなくすことを恐れていて、抗議すればやめるようです。

 さて、自分の個人情報だけでなく、他人の個人情報にも気を付けてあげるようにしましょう。職場から転出した人に電話がかかってくることがありますが、明らかに業務に関係があるとわかる場合(取引先であるなど)以外は、転勤先の電話番号をうかつに教えてはいけません。セールス電話だった場合はその人が迷惑します。
「○○は転勤しましたので、○○からそちら様にご連絡するよう申し伝えます。お電話番号とご用件を教えていただけますか」
と言うようにしましょう。これなら、セールスでなかったとしても、相手に失礼にはなりません。
 セールスだと、「今、出先からなので」とか言って、自分の電話番号を言わないことが多いものです。こちらの個人情報を入手しているくせに自分の連絡先は明かさないという卑劣な業者が多いのです。「こちらから○○様にご連絡しますので」としつこく電話番号をきかれたら、
「連絡先がすぐにはわかりませんので」
と婉曲に言うか、あるいは
「申し訳ございませんが、当人の了解を確認しなければなりませんので」
とはっきり言いましょう。セールスの場合だと、「こちらで調べ直します」とか言って、たいてい引き下がります。もし相手が自分の電話番号を言ったら、ちゃんと名指し人に伝えて、連絡をとるかどうかの判断を任せましょう。

目次 ホーム