No.18 1999/12/08
"Hi, Jack!"

 「ハイジャック」の語源は、おもしろいことに、悪人の挨拶言葉なんだそうです。犯罪の多いアメリカで、悪人が銃を突き付けてトラックの積荷や人の持ち物などを強奪する時の決まり文句が「Hi, Jack!」だったことからできた言葉のようです。
 「Hi」は「やあ」という挨拶言葉です。「Jack」は、男の名でもありますが、一般的に男という意味も持ち、見知らぬ男への呼びかけにも使われる言葉です。悪人の言葉であることを意識して訳せば、「よお、おっさん」あるいは「よお、にいちゃん」といったところでしょう。
 これをそのまま「hijack」という動詞および名詞にしてしまうところがアメリカ人の茶目っ気というかなんというか。日本語の感覚で言えば、「よおおっさんをやらかす」とか「よおおっさんをやられる」というようなものです。

 さて、私の手元にある1998年版ジーニアス英和辞典(大修館書店)には、「highjack」という綴りも「hijack」と同じ意味として載っています(1995年版OXFORD英英辞典には載っていません)。どうもこれは、「hijack」が飛行機の乗っ取りの意味でよく使われるようになったため、「高い(high)所」という連想から間違って綴られたものではないかと思われます。
 日本では、「ハイジャック」という言葉が知られるようになったきっかけが飛行機乗っ取り事件であったことから、当初からその勘違いがあったようです。そのため、船を乗っ取る「シージャック」、バスを乗っ取る「バスジャック」などという言葉が次々に作られました。
 しかし、英語では、飛行機に限らず、乗り物の乗っ取りはどれも「hijack」なのです。「seajack」、「busjack」などという語は英語にはありませんし、「jack」という語に「乗っ取り」の意味はありません。
 英語を話す時や書く時にはご注意ください。

付記 自動車を乗っ取る「carjack」は英語にあるそうです。

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