No.14 1999/11/23
文章だけのレシピ

1. はじめに
 ♪ちゃんちゃかちゃかちゃかちゃんちゃんちゃん ちゃらりろりんろんりん♪
 みなさま、こんにちは。きょうの料理のお時間でござあます。
 きょうは、みなさまに、一度食べたららりぱっぱ、市販品では絶対に味わえない、防腐剤なし、塩味控え目、失敗したらハイそれまでよ、禁断の味のイカの塩辛をご紹介いたしましょう。

2. 準備するもの
(1) イカ
 材料は、塩辛にできる新鮮なイカ。冷凍のスルメイカなんかがようござあますわね。船内冷凍ものがいちばん安心でござあます。
 冷凍でなしに、採れて1日以上たったものは、絶対にだめでござあますわよ。刺身用だといっても、安心してはだめでござあます。ワタは早く傷みますから。
 冷凍イカは、何時間か室温に置いといて自然解凍しまして、まだ少し冷たいうちに解体にとりかかるのがよろしいと思いますわ。電子レンジで解凍するのでしたら、くれぐれもご注意あそばしませ。かけすぎると、何を作っているのかわからなくなりますわよ。

(2) 粗塩
 それから、粗塩少々。だいたいですね、元のイカ100グラムあたり0.5ccを目安にしてくださあませね。
 このイカ計ってみましょうか。はかりによいしょ。えーと、500グラムほどでござあますわね。ですから、粗塩2.5ccってことですわね。

(3) 容器
 それから、適当な広口のガラス瓶をご用意くださあませ。よーく洗って、熱湯を少し入れてふたをして振ります。よいしょよいしょ…。あち、あち、あぢぢぢ。あら、ごめんあそあーせ。おほほほ。こうして殺菌いたしまして、お湯を捨てまして、ふきんで瓶の中を軽く拭いまして、乾かしておいてくださいませ。

(4) 脱水シート
 こちらにありますのが、昭和電工製の「ピチット」という脱水シートでござあます。
 あら、商品名を言ってもようござあましたかしら。ここはNHKではござあませんわね?かまいませんわね?おほほほ。
 これは、イカの肉の脱水に使いますのよ。肉をこれで挟んでおきますと、旨味の成分を残しながら、臭みの成分を水といっしょに吸い取ってくれるんだそうでござあますの。便利なものができましたわね。これですと、2時間ほどで余分な水分がなくなります。
 これは、お手に入らなくてもようござあます。もしお手に入りませんでしたら、水切りのためのざるをご用意くださあませ。

3. イカのさばき方
 では、イカの解体にとりかかりましょう。

(1) ワタを抜く
 ここんところをご覧くださあませ。これが頭で、これが胴体でござあますわね。胴体の内側を覗いてみますと、ここでワタが胴体の内側にくっついているのがおわかりいただけましょ?これをピッと引き離すんでござあます。
 それから、指を突っ込みまして、できるだけ奥まで引き離していきます。くれぐれもワタを破らないようにお気を付けくださあませ。よいしょ、よいしょ、ぐりぐり。
 まあ、つくづく見ますと、イカってグロテスクな生き物ですわね。頭の下に足が付いてて、頭の上に胴体があるんですものね。この世のものとは思えませんわね。よいしょ、よいしょ、ぐりぐり。
 はい、こんなもんでようございましょうかね。指が入るところまででよろしゅうございますのよ。あとは、胴と頭をひっつかみまして、慎重に引っ張りますと、ずるずる、すぽん。はい、こんなふうに内臓がすっぽり抜けます。ああ、よかった。うまくいきましたわ。

(2) ワタの中身を出す
 まあ、このワタ、むっちんぷりぷりして、ほんとにほれぼれしますわね。内臓の中でいちばん大きい、茶色いこれが、塩辛の原料になるワタでござあますのよ。
 これって、肝臓でしたかしらね。よく覚えておりませんけど。まあ、知らなくてもお料理はできますから。おほほほ。
 ほら、ワタの側面についている黒い細長い袋、これがスミなんでござあます。これを入れるのが“黒作り”なんでござあますけど、入れるかどうかは好みの問題でござあますのよ。私は入れないのが好みですので、ぴりぴりっとはがして、ぽいっ。
 そいでもって、包丁でワタを頭から切り離すんでござあます。よいしょ。はい、取れました。
 そうしましたら、ワタの中身をガラス瓶の中に絞り出します。むにゅむにゅむにゅ。まあ、ぷりんぷりんして、いいワタでござあますこと。よくなくて失敗するようなイカですと、ワタがとーろとろだったりしますのよ。
 あ、そうそう。ほかの内臓を破らないようにお気を付けくださいませね。
 はい、出ました。では、先ほど分量を決めておきました粗塩を中にぽいっ。

(3) イカの肉をさばく
 では、イカの肉を切りましょう。
 胴の肉は、縦に四つくらいに切ってくださあませ。先っぽのヒレみたいな部分、エンペラっていうんですけど、これは切り離しちゃってくださいませ。固くて塩辛には向きませんから。炒めてほかのお料理に使うのがよろしゅうござあますわね。
 皮ははがさなくてもようござあます。漬け込んでおけば皮もやわらかくなりますから。
 はい、縦に切りました。そうしましたら、むにょむにょした内臓の残骸なんかをよく取りまして、よーく水洗いしてくださあませ。じゃぶじゃぶじゃぶ。そして、水を切ります。えいっ、えいっ。
 次に、横方向に5ミリくらいの幅に切ります。皮を上にしまして、包丁の先の部分を使って、すーっ、すーっと切るのがこつでござあます。ほーら、きれいに切れますでしょ?
 切りましたら、脱水シートの上に置いてくださあませ。
 脱水シートがありませんでしたら、ざるの上に乗せて3時間ほど置いといてくださあませね。
 それから、足の肉。これも使えますから、切りましょうね。
 2本だけびろーんと長い足、これ、手なんでしょうかね。これの先っぽはおいしくないらしゅうござあますから、ほかの足と同じ長さの所で切って捨ててくださいませ。ぽいっ。
 そして、吸盤についている固い輪みたいなもの、これを爪でこそぎ取ってくださあませ。あんまり神経質に取らなくても、だいたいでようござあます。
 そして、洗いまして、水を切りまして、足を適当な長さに切ります。これも脱水シートへ…と。
 肉を切り終わりましたら、上からも脱水シートをかぶせまして、2時間ほど置いといてくださあませ。
 残った頭なんでございますけどね、切り開いて、目玉と口を取って捨てまして、ほかのお料理にお使いくださあませ。あ、目玉を取るときに、破れて中の液がぶちゅっと飛びますと、お洋服をよごすことがありますから、ご注意くださあませね。

4. 仕込み方
(1) ワタと肉を混ぜる
 こちらが、脱水シートで挟んで2時間おいた肉でござあます。ほーら、余分な水分が取れて、ぴちぴちしてますでしょ。これを、ワタを入れた瓶の中に全部放り込みまして、よーくかきまぜてくださあませ。ぐにゅぐにゅ。

(2) 発酵させる
 そうしましたら、ふたをしまして、室温に24時間置いて発酵させます。
 こちらが、24時間たった塩辛でござあます。お味見してみましょ。ぺろっ。んー、仕込んですぐのに比べて、塩味がだいぶまろやかになっておりますわ。
 あ、なめたお箸は、絶対に塩辛に突っ込まないようにしてくださあませね。雑菌が入りますから。
 24時間たったら、冷蔵庫に入れてくださあませ。もし氷温室がございましたら、そこに入れるのが安心ざます。こうして発酵を抑えるんでござあますの。室温に放っておくと腐りますわよ。
 こちらが、冷蔵庫でさらに24時間置いた塩辛でござあます。ぺろっ。冷蔵庫に入れる前に比べて、肉がもっとやわらかーくなっておいしゅうござあますわ。完璧食べごろでござあますわね。
 なるべく1ヶ月以内に食べきってくださあませね。

5. おわりに
 まあ、それにしても、なんと申しましょうか、気持ち悪い食べ物でござあますわね。日本人って、よくもまあ、こんなものがおいしいなんて発見したもんでござあますわね。西洋人はまず食べないでしょうねえ。
 えー、きょうご紹介しました塩辛は、防腐剤なし、材料の新鮮さが勝負の、うっかりすると危険が危ないお料理でござあます。ちょっとでも匂いが変だなとか、食べたら舌にピリッと不愉快な刺激があるとか、発酵が進みすぎて泡ぶくがたくさん出たとかいうことになりましたら、必ずあきらめて捨ててくださあませ。
 グルメって、ほんとに真剣勝負、冒険でござあますわね。おほほほほ。
 では、みなさま、ごきげんよう。
 ♪ちゃんちゃかちゃかちゃかちゃんちゃんちゃん ちゃらりろりんろんりん りん りーん♪

 図解なしのこのお料理マニュアルを読むだけでやり方が理解できて、初めて塩辛作りに挑戦して成功した方がおられましたら、お知らせください

目次 ホーム