図に乗って音楽ネタを続けます。
私が住んでいる横浜市では、視覚障害者のための歩行者信号が、判で押したように「とおりゃんせ」の電子オルゴールの音です。
とおりゃんせとおりゃんせ
ここはどこのほそみちじゃ
てんじんさまのほそみちじゃ
ちょっととおしてくだしゃんせ
ごようのないものとおしゃせぬ
このこのななつのおいわいに
ぺーぽーぺーぽーぺーぽー
(おいおいおい、増4度はやめてくれよ。)
二方向で鳴らしている交差点では、もう一方は決まって「♪誰かさんと誰かさんが麦畑〜」
(*)…、あ、いや、「♪夕空晴れて秋風吹き〜」です。
(*)「故郷の空」の曲はスコットランド民謡ですが、元の歌詞は「若い男女が麦畑でたわむれている」という内容だそうです。つまり、なかにし礼さん作詞、ドリフターズ・歌の「誰かさんと誰かさん」の方が元歌に忠実なのです。以上、余談でした。
この電子オルゴールの音は、音楽としては劣悪極まりないものです。
まず、オン・オフだけの一本調子の電子音であること。本物のオルゴールのように鋭く立ち上がってゆるやかに減衰していく自然な感じの音を出せる電子回路くらい、今どき安く買えるでしょうに。
また、曲が完結せずに途中でぶった切られること。これも、聞く人にとってはストレスフルです。
そして、きわめつけは、歩行者用青信号の点滅が始まった時の「ぺーぽー」。この音階は「ファ・シ」です。これは、安定感のある完全4度音程(ド〜ファ、ソ〜ドなど)よりも半音広い増4度音程です。平均律の周波数比で1:1.414(ご存じ、2の平方根)、純正律でも32:45という複雑な整数比で、和音にすると調和しない音程なのです。和音でなく交互に鳴らすのでも、不安定な感じを与えます。おそらくこれは、警戒心を起こさせるのを意図してわざとそうしているのでしょう。「おらおらおら、とっとと渡らねえと危ねえぞ」と言われているような感じです。よけいなお世話だ。「これから横断を始めてはいけない。すでに横断を始めているならすみやかに渡り終えなさい」という合図は、音を止めることだけで十分です(同じ横浜市内でも、「ぷっぷっぷっ」という控えめな合図音の所もありますが)。
交差点の近くに住む人は、こんな劣悪な音楽を一日中繰り返し繰り返し聞かされるのです。まったくお気の毒に。大人は慣れっこになって我慢できるでしょうが、乳幼児にこんなもの聞かせたら、情操教育も何もあったもんじゃない。それに頼る視覚障害者だって、目が不自由な代わりに音感が鋭い人だったら、きっとストレスフルだと思いますよ。
視覚障害者のための音信号は自治体によって違うようで、「ぴよ、ぴよ」「かっこー、かっこー」(二方向で鳴り分ける)という鳥の鳴き声に似た電子音を使っている所もあります。歩行者用青信号の点滅が始まったら音が止まります。これはメロディーではないので、視覚健常者にとっては(少なくとも私にとっては)、雑音として聞き流すことが容易です。こちらの方がよほどスマートな福祉政策だと思いますけどね。
いらいらする音楽の話のついでに、携帯電話の着信メロディー(俗称:着メロ)にも文句を言っておきます。
私は、電車の中で携帯電話で話をしている人がいても、大声でない限り、迷惑には感じません。しかし、けたたましい着信音は迷惑です。据え置き型の電話機の着信音は、電子音でもやわらかい音ですが、携帯電話の着信音はきつい感じの音ですね。気付きやすい音を小さな電力で鳴らすためにそうなっているのでしょうか。
まして、鋭い音色で「♪ちゃんちゃかちゃんちゃんちゃらりろりろりろちゃんちゃかちゃんちゃんちゃらりろりん」(ディズニーランドのテーマ曲だったっけな?)なんてメロディーをけたたましく鳴らされたら、もういらいらしてしまいます。私はメロディーを雑音として聞き流すことができないたちなもんですから。
着メロを使っている人は楽しいのかもしれないけど、周りの迷惑も考えてくださいね。